未経験から育てる覚悟――エンジニア不足に挑むアイティアスリート代表の採用哲学
ネットワークエンジニアの慢性的な人材不足が続く中、あえて未経験者の中途採用に踏み切っているアイティアスリート株式会社。今回は、代表取締役の中村学さんに、経験者採用だけでは立ち行かない業界構造への問題意識や、未経験者を見極め・育てるために大切にしている視点、そしてこれから目指す組織の在り方について伺いました。
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「経験者だけを採るのは無理がある」需給ギャップへの挑戦
――御社では、一般的に経験者が優遇されやすいネットワークエンジニアのポジションで、未経験の中途採用も積極的に行われていますよね。これには何か特別な戦略があるのでしょうか?
そうですね、正直に言ってしまうと、最初は「チャレンジ」だったんですよ(笑)。「実際、未経験の人を採ってみてどうなるんだっけ?」という思いからスタートしました。
というのも、この業界の現実として、ネットワークエンジニアの経験者人口って決して多くないんです。やらなきゃいけない仕事の需要に対して、エンジニアの供給が圧倒的に足りていない。その中で「経験者だけを採っていこう」というのは、かなり無理があるなという認識が強くありました。
――なるほど、市場全体のエンジニア不足という背景があったんですね。
はい。だからこそ、未経験であっても、うちの中でしっかりとした研修や教育環境を提供できて、お仕事の滑り出しが軽やかにできそうであれば、積極的に採っていきたい。そう考えて舵を切りました。
大前提、理念である「エンジニアを幸せにしたい」を実現する上で、経験者か未経験者かという属性はあまり関係ありません。元々の素養やマインドがフィットすれば、どちらも大歓迎というスタンスです。
――実際、異業種から転職されてくる方も多いと思いますが、未経験の方にはどのような特徴がありますか?
本当に様々ですね。前職の企業文化が染み付いているので、自由な会社出身の方は自由な働き方をされますし、堅実な会社出身の方はやっぱり仕事も堅実です。
特に、前職である程度の責任あるポジションや、店長などを経験されてきた方は、仕事へのスタンスがしっかりしていて伸びる傾向にありますね。現在はまだ社内全体の1割程度ですが、これからもっと増やしていけるポテンシャルを感じています。
大切なのは「地頭」と「柔軟性」。面接官が履歴書の“高校名”を見る意外な理由

――採用において、経験者と未経験者で見ているポイントに違いはありますか?
これは明確に違いますね。経験者の場合は、シンプルに「スキル」です。これまでどんな業務を経験し、どんな資格を持っているか。そこが第一で、第二にコミュニケーション力を見ています。
一方で、未経験の方に関しては、もう圧倒的に「コミュニケーション力」が第一優先です。
――スキルがない分、ポテンシャルとしてのコミュニケーション能力を見るわけですね。他にはどんなところをご覧になっていますか?
実は、「どこの高校を卒業したか」を結構見ています。
理由としては、大学って推薦やAO入試など入り口が多様化しているので、一概に学力だけでは測れない部分があるんです。でも高校って、その地域の中で「進学校」とか「実業系」とか、ある程度基礎学力や地頭(じあたま)の良さが反映されやすい指標だと思っているんですよ。
もちろん学歴だけを見ているわけではないんですが、エンジニアって入社してからも勉強し続けなきゃいけない仕事なので、詰め込みではなく、どれだけ柔軟に物事を考えられるかという「地頭の良さ」はすごく重要視しています。
――確かに、地頭の良さはエンジニアとしての伸びしろに直結しそうですね。
そうなんです。やっぱり難関校を出ている方などは、「あ、やっぱりすごいな」と感じる地力を持っていることが多いですね。逆に大学が有名でも、高校を見ると普通だったりすると、実際のパフォーマンスも普通だったり…(笑)。まあ、これはあくまで一つの指標ですけどね。
要は、「いかに柔軟性を持って新しいことを吸収できるか」。ここを面接での会話や経歴から見極めようとしています。
「質問できる人は、伸びる」――面接で見ているリアルなポイント
――未経験の方を採用して、現場で定着・活躍してもらうために工夫されていることはありますか?
まず一つは、カリキュラムに絶対の自信を持っています。外部パートナーと連携して、基礎的な「ITインフラとは何か」から、実機を使った演習、さらにはPalo Alto Networksのセキュリティ研修まで、入社後約2ヶ月間みっちりと研修を行います。社会人基礎力の研修も組み込んで、マインドセットもしっかり行います。
――研修制度がかなり手厚いですね。ただ、制度だけではカバーしきれない部分もあるかと思います。現場への配属時はどうされていますか?
ここが一番のポイントなんですが、未経験者を採用する時は、現場の課長が「この人と仕事がしたい」と手を挙げた時だけ採用するようにしているんです。
つまり、「俺が責任を持って面倒を見ます」と課長が言わない限り、採用しません。
――トップダウンで「この人を育てるように」と押し付けるわけではないんですね。
そうです。やっぱり、現場のマネージャー自身が「この人と一緒に働いているビジョンが見えるか」「育てがいがあるか」と思えないと、育成なんて絶対に続きませんから。
入社から一人立ちするまで、課長が責任を持って伴走する。この覚悟があるからこそ、未経験の方でもしっかり育っていくんだと思います。
――現場の意思決定を尊重することで、育てる側のモチベーションも担保していると。
おっしゃる通りです。面接も一次・二次ともに現場のマネージャーに入ってもらいますし、録画も共有して「この人欲しい!」という声が上がった人を積極的に採りにいきます。私一人で決めることはまずないですね。
結局、人と人との相性ですから、「一緒に仕事をして楽しいか」が最大の採用基準かもしれません。
面接でのNG行動は?対話のキャッチボールから見える論理的思考力

――面接をしていて、「この人は厳しいな」と感じる瞬間はありますか?
極端な例ですが、「全く喋らない人」か、逆に「喋りすぎる人」は難しいですね。
相手の反応を見ずに一方的に発信してしまう方は、お客様先に行っても同じことをしてしまうリスクがあるので、採用は厳しいですね。
あとは、ずっと下を向いて目が合わないとか、自分の話ばかりで他者(先輩や顧客)の話が一切出てこない方も、「物語がない」というか、チームで仕事をするイメージが湧きにくいです。
――逆に、評価が高いのはどういう方ですか?
最後に「何か質問はありますか?」と聞いた時の反応ですね。「特にありません」と言われると、「え、本当に? うちに興味ある?」と思ってしまいます。
一方で、伸びる方は質問の質が良いんです。「自分はこういう経験をしてきたんですが、御社のこの環境ではどう活かせますか?」といった、ロジカルで仮説に基づいた質問をしてくれます。
――質問の内容で、その人の思考力がわかるんですね。
はい。「分からないことを、どう整理して相手に聞くか」というのは、エンジニアの仕事そのものですから。今はスピード感が早い時代なので、昔みたいに「自分で調べてから聞け」とは言いません。むしろ、分からないことは素直に、かつ論理的に聞ける人の方が成長は圧倒的に早いです。
面接はコミュニケーションの場なので、会話のキャッチボールがスムーズにできるか、そこを一番見ていますね。
目指すは「100名の精鋭集団」。ユニット型経営で、誰もが責任と成長を実感できる組織へ
――最後に、今後の組織としての展望をお聞かせください。現在は拡大フェーズにあると思いますが、どのくらいの規模を目指されているのでしょうか?
今の目標としては、本社で60名、関西で20名、そしてこれから作る新しい拠点で20名、合計100名体制を目指しています。
そこで考えているのが「ユニット型経営」です。組織が大きくなっても、ピラミッドの頂点だけが責任を持つのではなく、拠点を増やし、ユニット(チーム)を分けることで、責任ある「ポスト」を増やしていきたいんです。
――組織を小さく分割していくイメージですね。
はい。ポストが増えれば、メンバーをマネジメントする経験ができる人が増えます。そうやって「人の面倒を見れる器」を持った人間を社内に増やしていきたい。
それが結果的に、きめ細やかなフォローや、エンジニア一人ひとりのキャリアを守ることにつながると信じています。
――単に人数を増やすだけでなく、守れる仕組みを作るということですね。
その通りです。AIの台頭やコロナ禍のような外部環境の変化は、これからも必ず起こります。だからこそ、何が起きても壊れない、強い組織の「仕組み」を作っておきたい。
エンジニアが安心して技術に向き合える場所を、100名、そしてその先へ向けてしっかり構築していきたいですね。



